羽ばたきの果て
開店前に、店先の掃き掃除をしていると、カラスの羽を見つけた。
少し小さいように思えた。
拾わず、ちりとりの中へそのまま掃き入れた。
カラスの羽を見つけたのは何年振りだろう。
小学生くらいの時は、学校の行き帰りでよく羽を拾っては手に持ちながら遊んでいたような気がするのに。
カラスは今も昔と変わらず飛んでいるのだから、カラスがいなくなったんじゃない。カラスのせいじゃない。
ほうきで掃いたりしなければ足元に気持ちが行くことなんてない。
目で見えているんじゃなくて、心が見ていないんだ。
背が伸びて地面が遠くなったから。勉強が難しくなったから。
自転車に乗れるようになったから。早く大人になりたかったから。
「砂利道がアスファルトに変わったから。」なんて、大人の言いそうなこと。
砂利道でも、気が付いていないと思うよ。
砂利が、履いている靴を傷つけないか・・・少しでも歩きやすいところへ足を運ぶのに必死で。
今より、これから先に起こることの方が大事で。
自分が人より幸せであるためにはどうしたらいいか・・・って。
日が暮れるまで四葉のクローバーを探したけど、私だけ一本も見つけられず、布団の中で悔しくて泣いたことがあったっけ。
ソンナコトくらいで。
とっても大きなデキゴトが、たったソンナコトに変わることが、大人になるってことなのかな。
’ソンナコト’いっぱいあったはずなのにもう思い出せない。
そんなことも思い出せない大人に憧れていたんだ・・・・・
店の前をランドセルを背負った男の子が通った。
木の枝を手に持って。なにぶん、気分は「マエストロ!」とでも言いたげに。
拾わずちりとりに入れたカラスの羽を、思わず探した。
だからって拾わないけど、見過ごしもしないよう、しっかり見る。
「今の私」の足元を・・・・