実家で昼飯を食べた。何年振りだろう。
実家に帰省したのは2年振りだが、昼飯をおやじとお袋と食うなんて、高校生の時以来だ。


以前とほとんど何も変わらない食卓。醤油さしの容器が変わったくらいで、落ち着くというよりも不思議な感じがして慣れるのに2,3分かかった。


「いきなり来るけん、何も用意しちょらんよ。なんもないが。」


なにも無いなりに、自分で食べる食事よりはずっと豪華だ。
ごはん、味噌汁、ホウレン草のおひたし、厚めのハムのスライス、根野菜の煮物、冷奴・・・・異常に美味そうに見えた。


親父が冷奴にネギやら生姜やら、薬味を取り、醤油をかけ、食べ始めた。
昔は俺の分や、姉貴の分も自分が全部仕切って薬味や醤油を勝手にかけた。親父の味しか知らなかったし、当たり前だった。


上京してしばらくは、「親父の味」を何の疑いもなく食べていたが、選べる自由があることにいつだか気が付き、食堂などではそこのおばちゃんの味だったりするし、「自分の味」を見つけ出したく、色々な薬味を試した。

俺のお気に入りはワサビになった。カツオ節もネギもかけない、ワサビオンリー。






俺は冷蔵庫からワサビを取り出し、器の隅に引っかけた。












お袋が、仕事のことや、彼女のことを聞いてくる。
テレビを見ながら二つ返事くらいで返す。


「ごちそうさん。」
最後にお茶を飲み干す。親父が俺の前に置かれていた薬味の小鉢を取った。あと一口しか豆腐が残っていないのに、残りの薬味を全部入れた。




ネギも、生姜も、ちょうど一人分の量だった。
親父も最後に渋い顔をしてお茶を一気に飲んだ。








俺の分の生姜が効き過ぎたんだろう。






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